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18/1/1 飯舘村犬猫レポート 前編

ジャンクションを通り抜け、北へ進路をとってまもなく平成30年がやってきた。
『人生という名の列車』がベースボールパークに差し掛かかり、僕はノスタルジーに浸っていた。
「バレーボール部のともこちゃん覚えていてくれてますか、あの頃僕ら風に立ち向かう勇敢な冒険者だった昭和55年」に、バスケットボール部のかおりちゃんが浮かぶ。

少し前に流れた歌では、ライオンがやはり風に立ち向かっていた。
そして「僕たちの国は残念だけど何か大切なところで道を間違えたようですね」の詩が刺さる。

人生とは風に立ち向かうことなのか?
近年風が強く感じる、おかげで前髪は減るし踏み出す一歩も重い。

回れ右をすれば向かい風は追い風に変わる。景色も変わる。
壁を立てれば風を感じないこともできる。
でも、そんなことできないし、したくない。

だって、風が強すぎて回れ右も壁を立てることもできない人がいるのを知っているし、
風を避ける自由を持たない動物たちがいるもの知っているから。

 

 

2018年、飯舘村は避難指示解除となって最初のお正月を迎えました。
2011年4月22日から2017年3月末までのおよそ6年、飯舘村には避難指示が出ていました。
しかし、多くの犬猫たちが村で生き続けました。
村への立ち入りはできましたので、飼い主やボランティアが村に通い犬猫の命をつないできました。保護され村を出た犬猫も少なくありません。亡くなったものも同様です。
現時点の帰還率は1割未満。元の暮らしを取り戻した人も犬猫もごく少数派です。

 

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農地に山と積まれた黒い袋(放射性廃棄物の入ったフレコンバッグ)が、飯舘村復興の足かせのひとつになっています。
仮置場、仮仮置場と呼ばれる96箇所に、1m四方の黒い袋がおよそ230万個。これらは焼却により量を減らし、原発周辺の中間貯蔵施設に運ばれる予定です。
しかし、中間貯蔵施設の用地買収は60%ほどの進捗。飯舘村から放射性廃棄物の山が消えるまでにはまだ長い時間がかかります。

 

 

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除染で宅地農地道路の空間放射線量は、おおむね半減した印象です。
しかし、依然として放射線量の高い地域もありますし、土壌汚染や未除染の森林から飛来する放射性物質は、住人に帰還を思い留まらせる大きな要因です。ちなみに村のおよそ75%が森林です。
除染がひと通り終わった今、放射性物質の影響は自然減衰に任せることになります。半減期30年のセシウム137が汚染の半分を占めることから、復興には20年30年の時間がかかるとの見方もあります。それを見越してか、農地にメガソーラーが盛んに建設されています。
一方で、すでにお米や野菜の栽培を再開している住人もいます。ほぼ全品放射性物質不検出。しかし、消費者が多くの選択肢からあえて原発被災地で採れた食べ物を選ぶでしょうか。

「気持ちがいいね。震災前の村に一歩でも戻したいという気持ちだ。飯舘の米はおいしいねと言ってもらえるよう、時間をかけてやっていきたい」
『村内で7年ぶりの田植え始まる(2017年5月10日) – 飯舘村ホームページ』
2017年飯舘村で稲作を再開した「高橋松一」さんの言葉には、生業への誇り、再開の喜び、故郷への愛着とともに先行きへの不安がにじみ出ていると僕は感じます。

人々や動物が安心して元通りの暮らしを送れるのが復興。
できるなら故郷に戻りたいのは多くの住民の想い。しかし、避難指示解除から9ヶ月で帰還率1割未満の現状。アンケートでは早期の帰村に不安を持つ住人の割合が多い結果が出ていました。
できるだけ早い住民の帰村が既定路線とされ、除染が進められました。
国や行政が村民の想いや不安に向き合い、避難指示解除そして復興への道筋を立てたかは疑問です。

久しぶりの飯舘村犬猫レポートのため、前置きとしておおまかに現状の整理をしました。
犬猫の問題は、レポートの中で触れていきます。

 

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2018年1月1日8時30分「みい」ちゃんの家に到着。
もう十分風に立ち向かっているみいちゃん、せめてリアル風を避けられているのに安堵します。

 

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「こんにちは」まで30分。
女の子は準備が大変なんだよね。

 

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風の音、時折響くカラスの声、それだけの世界。

突然、猫の叫び声。

 

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納屋にはじめて見る顔。耳カットされていないように見えました。どこから流れてきたのか。
隣の餌場で時折見かけるキジ白猫と鉢合わせたようです。

 

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みいちゃんは飼い猫です。家族は戻ってきていません。
はじめて会った4年前、彼女は警戒心をにじませていました。しかし、この日は30分僕の腕の中でゴロゴロ言っていました。

 

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イノシシの足跡。かつて野生動物に襲われ命を落としたであろう猫がここで発見されています。次また会える保証はありません。

 

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隣の餌場へ。
震災後生まれの野良猫。母猫はすでに亡くなっています。

 

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冬は連日氷点下。家屋解体が進む村ではねぐらを失う猫もいます。
ここは母屋は解体されたものの、猫の餌場は維持されています。
一昨年から、餌場となっていた建物の解体が目立ちます。人のいない土地では猫はゴミ漁りさえできません。ねぐらと餌場を失えば猫に居場所はなく100を超える猫が保護されました。
保護施設はキャパシティを超えて猫を抱えています。
引き続き建物の解体は進められていきます。
猫の里親、預かり先が求められています。
人に馴れた猫も保護されていますので、どうか優しい手を差し伸べてくださればと思います。

【緊急】!猫の保護先大募集!【拡散希望】(福猫舎ブログ)

※現在家では2匹の猫を預かっています。
猫の預かり、保護譲渡経験のなかった僕でも、なんとかこれまで数匹の猫を新しい家族に送り届けられています。初心者目線で疑問質問にお答えしますので、何かあれば下記までご連絡ください。
kami@nekotoru.com

 

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猫たちは、ただただ生きているように見えます。
彼らは何のために生まれてきたのでしょうか?
喜びや楽しみはあるのでしょうか?

 

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虎捕山津見神社で初詣。お昼過ぎの境内は30人ほどの人で賑わっていました。

道の駅、コンビニエンスストア、そして神社。
ひと気の集まる場所ができはじめています。

 

さあ、午後は犬の部です。

 

つづく

 

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