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17/3/11 飯舘村犬猫レポート2 きぼうの花

 

「タロウ」の家にやってきました。
3年ほど前はじめて会った頃は「噛む犬タロウ」でしたが、今や「キャンキャン」甘えてきます。
母屋の新築工事が続いていました。
もうすぐ家族との暮らしが再開するのかもしれません。

二桁いた猫は、家屋解体の前に次々と保護されました。
数匹が残っているものと思われ、猫の給餌台は残されています。

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親子猫東と呼ばれるお宅へ。
2015年に保護した「米太郎」「ゆき(いね)」の故郷です。
「ここに戻って、100まで生きるのが目標」
当時70代後半のご主人が笑顔で話してくれました。
除染が本格的に進みはじめ、帰村の二文字が現実味を帯び始めた頃でした。

この日、ご主人に再会。
猫を気にかけ、給餌台にフードの補充をしてくれています。
避難指示解除後には、息子さんとともに帰村するそうです。
「畑が元に戻るには30年50年かかるだろう。それまで俺は生きていないだろう」
「荒らしておくのも嫌だから畑はきれいにしてるけど、戻ってきても何も作れないだろう」
笑顔は消えていました。

できることなら故郷に帰りたい、しかしどう生計を立てていくのか。
帰村が現実となった今、元の暮らしを取り戻す難しさが住人の前に立ちはだかっています。

村民への補償は2018年3月で打ち切られる予定です。
避難指示解除への積極的姿勢、そして帰村を後押しする施策。
飯舘村行政には、帰村した村民の未来が描けているのでしょうか。

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冬に姿を消してしまった猫「ヒメ」ちゃん宅。
気配なし。

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「チーズ」の家へ。
前回、短い散歩になってしまったので、この日は長目にと思いながら参上しました。

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避難指示解除まで3週間、しかし村内には放射性廃棄物の入ったフレコンバックの山がいたるところに。この状況で人が住まうのは、世界の人々には奇異に写るだろうと感じます。

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今日はゆっくり散歩しよう。
言葉が通じたのか、いつもはあまり目を合わせてこないチーズが何度も目を見てきます。
暖かくて気持ちいいね。

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チーズの先導でたどり着いたのは高校のグランド。
かつて文明が存在していた惑星に迷い込んだかのようでした。

除染で、校舎は洗われ校庭の土は入れ替えられました。
しかし、0.4~0.5マイクロシーベルト毎時の放射線量です。
これは原発事故前の4~8倍ほどに当たり、法律で決められた年間被曝限度1ミリシーベルトを上回ります。
今、飯舘村に残る放射性物質の多くは半減期30年のセシウム137です。
この先、再除染や新たに未除染の裏山が除染されない限り、放射線量が大きく下がることはありません。

避難指示解除の先には、もちろん学校再開があります。
幼稚園と小中学校は平成30年にも再開される予定です。
しかし、多数の親御さんが、再開時期の延期を望んでいます。

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そして、「花卉農家」さんへ。
今回の飯館村訪問で、会いたかったのはこちらのご主人です。

2014年の3月11日に、一時帰宅されたご主人に偶然お会いしました。
「村に戻ってきた時に元通りの生活ができるように、他の村民が希望を持てるように、避難先で事業を再開した。しかし収支は厳しい」。
当時はまだ避難指示解除の目処が立っていませんでした。
先行き不透明な中、未来への一歩を踏み出されたもののご苦労が絶えない様子でした。

今年のお正月、花の栽培用の新しいハウスや作業場の整備が進んでいるのを目にしました。
避難指示解除を目前にして、ご主人はどうしているのかと気になっていました。

 

訪ねていくと、僕のことを覚えていてくれました。

「ほとんど避難前と同じ暮らしを取り戻している」
「100歳になるお母さんは、やっぱりここがいいと喜んでいる」
「畑だった土地をメガソーラーに貸したので、農作業の負担が減った」
「村からハウスを借りて、トルコキキョウの苗をもう育てている。7月頃には出荷できる」
「避難先ではじめたカスミソウは、東京の市場でよい評価をもらった。村でもご近所何軒かと一緒にカスミソウを育てる。こっちは5月頃には出荷する」
「好きな仕事をして暮らせるのがうれしい」
「花の栽培で自分がうまくいったら、みんなにこうやればいいんだって思って欲しい」

ご主人の明るい表情が印象的でした。

福島産のお米や野菜は、たとえ放射性物質未検出であっても、市場での競争力があるとは言えません。マイナスイメージの払拭は容易ではありません。
ならば、別の道で生活の再建を目指す。
ご主人の笑顔が、僕には飯舘村復活の希望に見えました。

20年の契約でメガソーラー施設に貸した土地からも、毎月収入が得られるそうです。
この仕組を考えた方は、素晴らしいと思います。
20年後には、村に降り注いだ放射能はだいぶ減っています。
住人の被曝と不安、農作物の安全と安心、世の中の目、何もかもが変るには時間が必要なのだと思います。放射能災害の被害の根深さを改めて感じます。

 

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話をしていると、「ヒゲ」ちゃんがやってきました。

「ヒゲは、家族だって自分のことを思ってくれているみたいだ。窓を開けておくと入ってきてコタツで寝ている」
へー、警戒心の強いヒゲちゃんがね!
兄弟の「アカ」も元気にしているそうです。

 

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カスミソウハウス。

 

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トルコキキョウハウス。

 

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トルコキキョウの赤ちゃん。
7月頃にはきぼうの花を咲かせます。
花の季節にご主人の写真を撮らせてもらいたいなと思っています。

 

2012年から飯館村を度々訪れていますが、これまでで最高の笑顔と出会え、うれしさがこみあげてきました。

 

『17/3/11 飯舘村犬猫レポート3 マメの家』へつづく

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  1. きのこ

    年間の被曝量は、現在20ミリシーベルトまで、勝手に日本政府が上げてしまっています。
    これは危険だと、たくさんの人が反対しているし、国連でも危険だと訂正するように勧告しているそうですが、日本政府は無視していて「帰村」を急がせています。

    日本は、チエルノブイリよりもひどい扱いを、福島に対して行っています。
    アベさんの「被災者に寄り添う….」なんて、口だけです。

    太郎もチーズも、ヒゲちゃんも頑張っていますね。

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