マメのつぶやき CALL MY NAME 2
本投稿は、2012年9月7日発売の毎日新聞社のiPad向け写真週刊誌PhotoJ 63号に掲載された記事を、一部写真を変更して再構成したものです。
iPadをお持ちでなく記事をご覧いただく機会のなかった方は、ぜひご覧になってください。
別のブログに記事を掲載していましたが、そちらは近日中に閉鎖することにしましたので転載することにしました。
猫の「マメ」のつぶやきを通して、福島の原発被災地域に思いを馳せていただけましたら幸いです。
マメの暮らす飯舘村では、原発事故から3年以上が経過した2014年になっても全村民の避難が続いています。
そして、人の暮らせない土地で犬200頭、猫400匹以上が生き続けています。
住人の帰還を表向きの目標に”除染”が進められていますが、放射線量が人の住めるレベル(年間被ばく線量1mSv)まで下がる目処はたっていません。
しかし、村民には帰村以外の選択肢が与えられていないに等しい状況が続いています。
戻りたくても戻れない、外に出たくても出られない…
人の将来がどうなるのか見通しが立たない中で、犬猫たちは汚染された土地に縛り付けられたまま長い時間を過ごしています。
収束どころか時間が経てば経つほど、人々も動物も疲弊しているように僕には見えます。
この記事を最初に作成した2012年の夏、来年の夏には何かが少しは良い方向に動き始めているだろうと思っていました。
しかし、そうではありませんでした。
2年後の夏を迎えようとしている今も同じ状況が続いています。
もしあなたが、原発事故前と変わらぬ生活を取り戻していたしても、そうではない人たちがいることを忘れないでいて欲しいと思います。
そして、被災した人たちは僕らと同じ普通の人であることや、被災した犬猫が僕らの家にいる愛すべき犬猫と何も変わらない存在、かつては毎日名前呼ばれ人ともに暮らしていた存在であることも知ってほしいと思います。
『飯舘村の猫、マメのつぶやき』
僕の名前はマメ。生まれてからずっと福島県の飯館村で暮らしているんだ。
おじいちゃん、おばあちゃん、お兄ちゃん、大好きな家族との暮らしを僕はとても気に入っていたんだ。
とても眺めが良いし、遊び場もいっぱいあって、本当に素敵なお家なんだよ。
でも、今はひとりで過ごす時間が長くて、正直とてもさびしいんだ。
もう一年半くらい前になるのかな、ある日地面がドーンと大きく揺れたんだ。
それからしばらくして、ずっと一緒に暮らしていた家族がどこかへ行ってしまったんだ。
ひとりでいることはさびしいよ。だけど、大好きな家族に会えないことのほうが、もっとさびしいよ。
今は何日かおきに、おじいちゃんが会いに来てくれることが一番の楽しみなんだ。
近所のおじさんたちも、毎日様子を見にきてくれるんだ。人に会えるとやっぱりうれしいよ。
でもね、最近のおじいちゃんは悲しそうな顔をしていることが多くて、僕は心配なんだ。
庭からの眺めはおじいちゃんの自慢だったんだ、でも今はさびしそうな目で山を見ているんだ。
「また村でみんなで暮らしたいな。」最近のおじいちゃんの口癖だよ。
なぜ、昔みたいにここでみんなで楽しく暮らせないのか、僕にはわからないよ。
おじいちゃんは夕方になると「マメごめんな、また来るからな」と言って、どこかに行ってしまうんだ。
僕は、その時が一番さびしいんだよ。だけどね、おじいちゃんもさびしそうだから僕は我慢するんだ。
おじいちゃんのことが大好きだから、僕は我慢できるんだ。
~おわり~
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■お知らせ
上村雄高写真展『Call My Name 原発被災地を生きる犬猫たち』のポストカードのネット販売をはじめました。
飯舘村で撮影した犬猫たちのポストカードです。
7枚セットが2種類、各1000円です。
ポストカードは写真展の会場だった「ギャラリー・エフ浅草」と私のネットショップ「猫撮る商店」のみでの扱いです。
よろしければご利用ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
またのお付き合いを、よろしくお願いいたします。
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