15/1/23 飯舘村犬猫レポート3:ゴエモンの家族
■福猫舎
郡山市にある被災どうぶつシェルター「福猫舎」に到着しました。
管理人の「犬班A。 」さんは、震災直後から被災地の犬猫レスキューに身を投じ、2013年に念願だったシェルターを構えました。
数十頭の保護猫のお世話をしながら、旧警戒区域や飯舘村で猫の保護や給餌を精力的に続けています。
被災地の動物レスキューになくてはならいひとりです。
「マメ」がいました。
人の膝の上に収まります、なんの迷いもなく。
「本当にずっとじーちゃん(飼い主)にべったりで暮らしてたんだろうね」
犬班A。さんの言葉に、マメのがんばりを讃えました。
マメは1,300余りの人のぬくもりのない夜を超えてきました。
マメは、目の上の傷が悪化し、ボランティアの「日比」さんに保護されたのを機に、飼い主が「春になるまでマメを預かってください」と福猫舎で暮らすことになりました。
仮設住宅で猫一匹飼えない理不尽を感じますが、マメが野生との境界のない世界を脱出し、専用でなくとも人の膝を得たことに胸をなでおろします。
マメが村を離れる経緯は日比さんのブログでご覧いただけます。
・マメ入院
『飯舘村訪問日記623 2015/01/09』
・マメのお見舞い
『飯舘村訪問日記625 2015/01/11』
・マメが村を離れることが決まった日
『飯舘村訪問日記630 2015/01/17』
「もも」ばーちゃん。
犬班A。さんが真っ先に「かわいいでしょ」と紹介してくれました。
「何一つ諦めるつもりのない、潔い気性を持った強い子だった」
犬班A。さんのももばーちゃん評。
家族と離れ離れになった後、闘病つづきの余生を送りました。
しかし、愛されながら過ごした時間は、彼女にとって苦しくとも不幸ではなかったはずです。
「醍醐」
飯舘村にいた頃は、「ヤマパン」と呼んでいました。
かつてピーンと張り詰めていた彼とは、明らかに違う心持ちが感じられます。
猫が外で生きること、まして人の営みが消えた場所です、気持ちの休まる瞬間がどれほどあったのか。
墨の入れ方を間違えたがイカした「ダイアナ」ちゃん。
犬班A。さんが言ったとおり、たしかに「フォトジェニック」
しばらく撮影に付き合ってくれました、ありがとう。
出発の時間が来ました、あっという間に。
「ゴエモン」をお預かりして、里親さんの待つ茨城県に向かいます。
当初はゴエモンを、根城としていた山木屋交差点で保護し、そのまま里親さんにお届けする予定でした。
しかし、前の日にゴエモンが手に怪我を負い日比さんに保護されました。
ひと晩病院で過ごし、この日犬班A。さんが引き取ってきてくれました。
茨城への道中、ゴエモンはときおりか弱い声で何かを訴えてきました。
犬班A。さんが言ってました。
「ヘタレだよ、ゴエモン」
車が苦手なだけですよね。
約束の時間から数分遅れて、里親さんと待ち合わせた「竜ケ崎中央獣医科病院」に到着。
受付時間を過ぎていましたが、里親さん病院スタッフのみなさんがゴエモンを待っていてくださいました。
体重「7.3」kg
堂々たるボス猫の体です。
いちばん先に食べ始めて、誰より最後まで食べている。
日比さんのブログで度々目にしたゴエモンの姿です。
人のいない地にあっても、どこかユーモラスだった彼ですが、顔に刻まれた傷やボロボロになった歯が過酷なサバイバルを彷彿とさせます。
ときおり発するか弱い鳴き声、ボス猫風情はすでに消えていました。
里親を申し出てくださった「あつこ」さん。
あつこさんは、猫の保護活動をされており18匹の猫と暮らしています。
地元で精力的に活動しながらも、原発被災地の犬猫にも思いを寄せてくださり、僕の活動の支援をしてくださっています。
あつこさんとは、共通の友人『幸せの703号室』の「ハハ」さんを通じて知り合いました。
この日の様子は、ハハさんがいち早くブログに掲載してくださっています。
ネットがあまり得意でない(すみません…)あつこさんが「ひとりが一匹の輪」が広がることを願い、思いを同じくする保護活動仲間で人気ブロガーのハハさんに掲載をお願いしたそうです。
たくさんの保護猫のお世話や地元での活動をするあつこさんが、被災地に足を運ぶことは現実的ではありません。
しかし、被災地で生きる犬猫を救いたい想いは同じ。
あつこさんは、犬猫への愛情を表現してくださいました、最大限の行動で。
「ずっと気になっている老猫ゴエモンくんの体調が心配なので、保護をお考えならお知らせください。余生を我が家で過ごしてもらえたらと思ってます。ゴエモンくんが嫌じゃなければですが(笑)」
このご縁のきっかけとなった、あつこさんからの突然のメッセージです。
おそらくウイルスキャリアであろうゴエモンの保護を、僕は躊躇していました。
老猫でもあり、里親を見つけるには条件が悪いと感じたから。
しかし、あつこさんは深い愛で、ゴエモンを丸ごと受け止めてくださいました。
一匹の猫の世界を180度変える力があります、ひとりの想いと行動には。
「ひとりが一匹の輪」が広がることを心から願っています。
あつこさんの膝の上がゴエモンの求めていた場所だと確信できました、ほんの2日前までサバイバルを続けていた面影を潜めた彼の姿に。
ゴエモンは家族になりました。
あつこさん、ありがとうございました。
ゴエモンを末永くよろしくお願い致します。
このご縁に関われたことを、うれしく思っています。
ついでにと言ってはなんですが、保護した猫の基本的な処置もしていただきました。
性別は男性。
血液検査は全項目正常値、ウイルス検査FIV・FeLVともに陰性。
触診、耳のチェック、ノミ・ダニ駆除、駆虫薬の滴下。
ゴエモンと僕の保護猫「米太郎」の処置をしてくださったのは、「竜ケ崎中央獣医科病院」の院長・太田黒 久寛先生です。
遅い時間にも関わらず、手際よく丁寧に処置をしてくださる姿にプロ意識を感じました。
福島の被災地の猫ということで、多大なるお気遣いもいただきました。
お茶と栄養ドリンクまでいただいてしまいました。
大田黒先生、病院スタッフのみなさま、お世話になりました。
ありがとうございました。
「ひとりが一匹の輪」は、優しさの輪だと感じます。
一匹の猫のために、何人もの人が優しい手を差し伸べてくださいました。
被災地にいたゴエモンの命をつないできた人たち
大田黒先生
病院のスタッフさん
そして、ゴエモンを家族に迎えてくださったあつこさん
誰かの優しさが、他の誰かの優しさを呼び寄せ、一匹の猫の世界が変わりました。
人は被災地の犬猫を過酷な環境に追いやりました。
いまだにサバイバルを強いています。
しかし、一方で人は彼らの希望にもなれるのだと確信しています。
外にいた頃のゴエモンと、この数日後のゴエモンの姿をお送りして、レポートを終わりたいと思います。
以下、写真提供:あつこさん
ゴエモンさん、お幸せに。
よろしければ、こちらもご覧ください。
エサ場のボス猫だったゴエモンの気持ちを代弁した記事です。
『14/8/17 飯舘村 猫撮るレポート1:ゴエモン氏おおいに語る』
[おわり]
最後までご覧いただきありがとうございました。
またのお付き合いを、よろしくお願いいたします。
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