17/1/1 飯舘村犬猫レポート2 犬・白猫銀座・太陽
今年3月に避難解除される原発被災地・福島県飯舘村。
避難から6年目の元旦、現地に残された犬猫に会いに行ってきました。
「17/1/1 飯舘村犬猫レポート1 待ちわびる猫」はこちらです。
『太郎の家』
かつては、犬の「太郎」と猫が10匹以上暮らしていた家です。
昨年訪れた時、解体中だった母屋は新築されていました。猫たちがねぐらにしていた納屋も解体されましたが、それに合わせて多くの猫が保護されました。
「わかったよ、ちょっと待って」
散歩。派手に散らかしました。
その辺をひとまわり程度でしたが、少しは楽しんでくれたようです。
今飯舘村で暮らす犬は、6年近くほとんど鎖につながれて過ごしたことになります。
環境省は「災害時におけるペット の救護対策ガイドライン」でペットの同行避難を推奨していますが、ガイドラインは文字通り指針であり、強制力のある法律ではありません。
また、災害時の対応は市区町村に委ねられ、ペットの避難はあくまでも飼い主の責任でと謳われています。
飯舘村のケースでは、ペット同伴での仮設住宅への入居が認められなかったこと、狭小な仮設住宅では中型犬以上や多頭の飼育は現実的ではなかった、などの声を耳にしました。
避難後に作り上げた生活を、途中で変えるのは簡単ではないと思います。災害時ペットを守るのは飼い主の責任だとしても、ペットの同居を前提とした避難住宅の設置を義務付けるなど法改正があってもいいのではないかと感じます。
『親子猫西』と呼ばれる餌場は、すべての猫が保護され閉鎖されました。
震災後、ここではたくさんの白猫が生まれました。野良猫である彼らの命はボランティアによりつながれてきました。
2015年1月
2017年1月
このお宅も解体される予定と聞いています。
『親子猫東』で、私は「米太郎」「いね(現ゆき)」の二匹の白猫を保護しました。
ここでも震災後に白猫が多く生まれ、隣の親子猫西とあわせて白猫銀座と呼ばれていました。
彼らが身を潜めていた納屋はリフォームされ、餌場は別の場所に移動されていました。
まだ、いね(現ゆき)に似た白猫が残っています。
2015年2月・いね
2017年1月
餌場のあるお宅の目の前の風景。元は田んぼだった場所です。
近所で農作物の汚染を測る実験用の畑を目にしました。
フレコンバックの山、土壌汚染、消費者の不安。
避難解除となっても、農業を生業とする村民には、放射能の壁が立ちはだかるのは間違いありません。
『チーズの家』
洋風顔の「チーズ」くんは暇そうにしていましたが、人が来ると慌ただしくなります。
おやつを貪り、ご飯をねだり、リードを目にすればまだつなぎ変えてないのに散歩に出発しようとします。
チーズもまた、鎖の長さの世界でいつ来るかわからない人を待って6年近い時間を過ごしてきました。
地味に散らかしました。
もうちょっと遠くまで行きたいワン
チーズの家の農地もフレコンバックに覆われていました。
『クーの家』
グレーの猫が保護され、残るは黒猫のみと聞きました。猫の姿はなくフードを補充。
リフォームされた母屋はひっそり。
『さくらの丘』
黒猫が山から降りてきて、頭隠して尻隠さずでウェットフードを貪る。
僕が到着するとすぐに、彼の催促が響き渡りました。人が来るのを待っていたのでしょうね。
安全確認。
丘を下ると黒光りする海原。
飯舘村と民間企業が合同で開発したメガソーラー発電施設。夏には稼働をはじめ、この先20年東北電力への売電で収益を上げる計画。収益の一部は地域の営農再開に充てる計画のようです。
美しい里山にはあまりに似つかわしくない光景に、心が揺れました。
村内には他にもいくつかメガソーラー施設が作られています。避難解除となっても、かつての美しい田園風景を取り戻すには、数十年の時間が必要と行政も考えていることの現れと感じました。
飯舘村に降り注いだ放射性物質の半分は半減期30年のセシウム137と言われ、山林除染の方法は決まってもいません。
今年3月に飯舘村の避難指示は解除されます。翌年には賠償が打ち切られます。
農業人口が決して少なくない飯舘村、復興の2文字はまだまだボヤけていると感じます。
住民や行政も、村の未来をうまく描けていないのではないかと想像します。
改めて原子力災害によるダメージの深さを思わずにはいられません。
損害賠償は、放射能がすべて無くなるまで続けるべきです。
何兆円もかかる廃炉については、なんと平気で、全国民に「電気代」として払わせる….
一番コストが低い原発とさんざん喧伝して、この始末!
本当に許せません。東電も、政府も。
「うつくしまふくしま」を取り戻すまでは、責任を負うべき東電、しかし、その電気を使っていた都民、やはり責任の一旦を担うべきかと思います。
残されて、鎖につながれ人々を待つ犬たち、餌を求めてさすらう猫たち、ごめんなさい。心から謝ります。