ここにいる その1:除染
4月3日の飯舘村犬猫訪問レポートです。
4月に入り写真展『Call My Name 原発被災地を生きる犬猫たち』の準備に追われ、レポートの更新が遅くなってしまいました。
4月3日、8日、15日、29日と4回分をため込んでいますが順次公開していきますので、どうぞお付き合いください。
4月3日木曜日未明、東京を出発。
この日は、ひとりでの飯舘村訪問。
いつも一緒に行くチーム銀次のIzumiさんとの訪問を予定していた4月1日は、僕の都合が悪くキャンセルさせてもらったのですが、ネ根性青銀号(レガシィくん)のかわりにオレ銀号が出動。
Izumiさんと豆川さんとの初コンビで飯舘村を訪問してくれました。
4月1日のオレ銀号の訪問レポート
Izumiさん[春来たる 1:四月馬鹿]
豆川さん[4/1@チーム銀次1]
そして、4月1日に僕が飯舘村に行けなかった日。
冬からリンパ腫での闘病を続けていた愛猫「みる」が、空へ旅立っていきました。
みるを看取ることができたのは、大いなる力のはからいだったのかもしれません。
みるには、またいつかどこかで会いたいです。
さすがにあまり元気はでませんでしたが、飯舘村で生きている子たちもみると何も変わらないかわいい子たちです。
行ける時にはやっぱり会いに行きたい。
そして、僕には飯舘村に行きたい大きな理由もありました。
この日は飯舘村の犬猫給餌の大先輩日比さんがお休みの日。
いつも訪問するお宅は2日前にオレ銀号が行っているので、ボランティアの訪問間隔が開いてしまっているお宅を訪問しようと、前日に日比さんにまだ行ったことのないお宅の情報などを教えていただきました。
2年前に1度だけ訪れたことのある飯舘村北部の「須萱地区」に到着すると、同じ場所とは思えない光景が広がっていました。
除染
この地区の除染が進んでいることは知っていましたが、実際に広大な敷地がのっぺらぼうにされているのを目にすると、違う世界にきたかと錯覚しそうになります。
削られた土地の向こうには、森が手つかずのままの残されています。
村に降り注いだ放射性物質は森を避けてくれたのでしょうか。
もしこの風景が村民の明るい未来につながるのなら受け入れることもできますが、今のところ僕にはそうは思えません。
あまりにも大がかりな茶番…そんな言葉がよぎります。
■1軒目 崩れた蔵のお宅
たしか2月の大雪で蔵が崩壊したと聞きました。
村民の避難から3年近くがたち、人の営みが消え去った建物の傷みが目立ちはじめています。
この地に再び人の営みを取り戻すには、多くの建物の解体や再建が必要なことは素人目にも明らかです。
この地区は2年後の帰還を目指していると聞きましたが、放射能以外にも問題は山積みです。
崩壊した蔵を唖然と見つめていると、ヒョコ!(猫はどこにいるでしょう?)
車の音を聞きつけて、まだまだ子猫の面影を残す三毛猫さんも姿を見せてくれました。
警戒モード全開。
「ご飯だよー」とやさしく言ってみたものの、ひたすら睨みつけてきます。
そりゃそうだよね、人を知らずに育ったんだもんね。
ヒョコの子も、無言のままでしたが同じく存在をアピールするかのように、見えやすい所に出てきましたよ。
人が怖いのに人が運んでくるご飯を頼りに生きている猫たち。
彼らの立場の弱さが胸に突き刺さってきます。
もしかしたら、彼らは僕が思うよりも何倍もたくましいのかもしれません。
しかし、「ここにいるよ」と存在をアピールする姿からは、決して生きるのが楽な環境ではないことが伝わってきます。
せっかく産まれてきたのに、こんなに生きづらい場所で暮らさなければならない猫たち。
まだまだ子猫の面影を残すかわいい体とは不釣り合いな鋭い眼差し。
彼らとて、家の猫と同じように人と暮らせば、ただただかわいい存在になる資質を持って産まれてきています。
それなのに…
こんな厳しい環境で暮らすことを強いる人の罪深さを感じずにはいられません。
彼らの命をつなぐ給餌台
■2軒目 玄関前に餌場のあるお宅
猫の姿はなし。
玄関前に餌場があるため、「ご飯だよー」と何度か大声で叫びました。
カラスやたぬきに食べられてしまう前に、ニャンコが食べてくれるといいのですが。
除染の終わった庭には家人が植えたのでしょうか、かわいい花が。
お宅の前の農地は除染でのっぺらぼう。
1年後2年後、この風景はどう変わっていくのでしょうか。
■3軒目 ワンコ2頭のお宅
2年前にこのお宅に支援物資の犬小屋を届けに来たのを覚えています。
2年前。住人の避難から1年余りが経ち庭は少しずつ荒れ始めていました。
そして、いま。
除染により多くの草木が取り除かれていました。
除染・・・汚染を取り除く。
それは放射性物資が降り注いでしまった草木を除き、土の表面を取り除くということ。
取り除かれた草木や土は、フレコンバックに入れられすぐ近くに山と積まれています。
放射性物質を消し去ることができないという現実がはっきりと見えてきます。
福島第一原発からは今も放射性物質が出ています。
近くの森の除染は行われません。
再び放射性物質が降り注いだら、また除染をするのでしょうか…イタチごっこ。
2年の間に、だいぶふっくらした白わんこ。慢性的な運動不足による肥満と思われます。
人がいないこと、毎日適量の食事と運動ができないということ、当たり前が失われた土地で犬たちが健康でいつづけるのは簡単なことではありません。
白ワンコの棲家からは、のっぺりとした土地が見えています。
2年前もビビリだった黒ワンコはビビリのまま。
■4軒目 給餌台発祥の家
現在は村に20台以上設置されている給餌台。「ここが発祥の地です」と日比さんが教えてくれました。
むき出しの餌はカラスやたぬきなどの野生動物に狙われ、猫が食べる前になくなってしまいます。
野生動物の侵入により家が荒らされることは村民にとっても好ましいことではありません。
それを防ぐために考えだされたのが給餌台です。
餌は残り少なくなっていましたが、確実に猫たちの命をつなぐ役割を果たしていました。
かわいい三毛猫が姿を見せてくれました。うまうまウェットを進呈。
人見知りな三毛も。
そおーっとこちらの様子をうかがっているようで、意外とわかりやすいところにいるのがかわいいというか切ないのです。
「わたしはここにいるのよ、わたしにもご飯をちょうだいね」と言われているように感じます。
この子も、人は怖いけれども人の運ぶご飯を頼りにしている猫。
他にも猫がいるという情報でしたので、ご飯は多めに用意。
このお宅の除染はこれからということで、作業員の方たちが放射線量を計測に来ていました。
■5軒目 東端のBOX宅
猫の姿なし。
しかし、給餌台の餌には猫が食べた跡が。
このお宅からはフレコンバックの山が見渡せます。
帰宅の度に増えていく汚染物の山を見て、住人は何を思うのか。
不自然なむき出しの土と砂利。
庭全体が砂利と土。
このお宅の元の姿を僕は知りません。
しかし、除染後のいまの姿はあまりにも殺風景でウソっぽく感じます。
削り取られたのは放射性物質に汚染された土や植物だけではなく、かつてここに流れていた幸せな時間の記憶でもあるような気がしてなりません。
この地に再び幸せな時間が戻るのあれば良いのですが、もしそうでなければただただ哀しい風景を生み出しただけになってしまいます。
削り取られた土地に再び美しい花が咲き、家に住人の笑い声が戻る日がくれば良いのですが…
効果に懐疑的な声も多くある除染が進んでいるのを目の当たりにし、もしこれが村民の将来にとって意味のないことと後になって知らされたら…
そうらならないことを願いつつも、いまのところ村民を村に戻すためのアリバイづくりなのではという思いを拭い去ることはできません。
[つづく]
■写真展のお知らせ
『Call My Name 原発被災地を生きる犬猫たち』
会期|2014年 4月23日(水)~6月8日(日)
※会期が延長になりました。
@ ギャラリー・エフ 浅草[HP]
東京都台東区雷門 2-19-18 [地図]
12:00~19:00(最終日は17:00まで)|火曜休
※4月29日はギャラリーとカフェのみ営業
入場無料(犬か猫のフード1品をお持ち寄りください[任意])
※フードのお持ちよりは任意です。フードをお持ち寄りいただかなくても展示はご覧になれます。
村の犬猫にあの子にこれを食べさせてあげたい、そんな気持ちをお持ちいただけましたら、ぜひフードをお持ち寄りください。
自分の犬猫とかわらない存在として、彼らを想っていただけたらうれしく思います。
※フードは飯舘村の犬猫に届けさせていただきます。
[写真展詳細@ギャラリー・エフHP]
[フードについて・ウマいメシお品書き]
▼猫撮るブログ内のお知らせ記事もよろしければご覧ください。
写真展『Call My Name 原発被災地を生きる犬猫たち』@東京・浅草(4/23~5/26)
最後までご覧いただきありがとうございました。
またのお付き合いを、よろしくお願いいたします。
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