14/7/1 飯舘村 猫撮るレポート4:蕨平(わらびだいら)
7月1日の飯舘村犬猫訪問レポートその4です。
この日は、日比さんがお休みの日。
最近は日比さんだけが給餌に回っていた南部の「蕨平地区」に入ることにしました。
蕨平に入るのはほぼ2年ぶりのことです。
蕨平は、立入禁止になっている「長泥地区」の隣にあり、村の中でも線量が高いと言われている場所です。
広い範囲に点在した6箇所の給餌ポイントがあります。
事前に購入した村の地図で場所を確認し、日比さんにメールでそれぞれの給餌ポイントでの注意事項を教えていただきました。
「栗の碑バス停」と呼ばれる場所以外は知らないところばかり、ほとんど知らない場所にはじめて行くのは今でも少し緊張します。
しかし、僕は蕨平の子たちもしっかり記録に残しておきたいという想いを、以前から持っていましたのですごく楽しみでもあります。
楽しみというと不謹慎なのかもしれませんが・・・せめて心は楽しみながらやらないと、この撮影と活動は続けることは難しいのでご容赦ください。
『猫をめぐる冒険、たまに犬 蕨平編』
マメの家を後にして、蕨平へ向かいます。
長泥が通れればあっという間に着く場所ですが、今は通れません。
村の中心部近くまで一度出てから、東へ進み、更に南下します南下します。
うへー、遠いいワイ。めっちゃ遠回りですねん。
■チビの家@11:15
間違えて隣のお宅に入ってしまいました…ドンマイ。間違えたこともありマメの家から45分もかかったのか・・・
村のお宅は通りから母屋までのアプローチが長くうねうねしているところが多く、カーナビさんが「目的地は左側にあります」と仕事を終了しても「へっ?」ということがあります。
ここを入るのか?はたまたひとつ先なのか?…1/2の選択、だいたい2回に1回はハズレます。
さて、やっとのことでたどり着いた「チビの家」
給餌BOXを発見しました!
いや、すごくわかりやすい場所にあるんですけどね。
ドライフードは少々残っていました。ギリギリセーフのタイミング。よかった。
レンガが入っているのは、カラスや野生動物が穴からくちばしや手を入れて、トレーを引き寄せてフードを食べてしまうのを防止するため。
しかし、どうやら少し動かされてしまっていたようです。高い位置にフードを置くことでタヌキは防ぐことに成功していますが、カラス、ハクビシン、アライグマと強敵が目白押しです。
猫たちは野生との境界線のない過酷な世界で生きています。
猫の姿はありません、気配すらありません。
「ニャーニャー言いながら作業をしているとこたえてくれることがありますよ」
と日比さんからのメールに書いてありましたので、ニャーニャー(低音)といいながらドライフードを補充したり、ウェットフードを用意したりしていました。
たまに恥ずかしくなって「ごはんきたよー」で誤魔化しながら。
果たして・・・
無言で見られていることに、しばらくしてから気が付きました。
は、はずかしいじゃないか、君。
この子は日比さんによって「セリ」と名付けられています。蕨平の子たちの名前は山菜シリーズです。
セリが下りてこないので、大嫌いなピンクのリボンを撮影してみました。除染対象の目印です。
調子に乗って近くまで寄り過ぎました。食事の邪魔をしてしまいました、ごめんね。
その後、戻ってきてたくさん食べていただけましたよ。
で、「納屋の2階にもドライフードを」という指示にしたがい、はしごを登っていると下のあっちのほうにセリが!
かっこいい全身を捉えることができました。
長毛ふさふさ、どこのええ猫やねん!会えてうれしかったよ。
でも君は人がこんな酷い状況をつくらなければ、もっと楽に生きられたのにね…申し訳なく思います。
君の存在は僕もしっかり記憶したし記録しました、また必ず会いに来ます。
■白ラブちゃん
なにそのニコニコw かわええw
福猫舎の「犬班A。」さんが贔屓している「ラブ」ちゃんです。
近づくとウハウハのキャピキャピです。おやつより人のタイプです、キャピキャピ。
少し戯れてからのドライフードボリボリ。ウェットはお気にめさなかったようです、次は違うの持って行くね。
すごくいいボリボリ音を出す子です。
放射線量率は「1.87μSv/h」。
思ったよりも高くありません。マメの家付近の方がよっぽど高い数値が計測されます。
この線量計はおーあみ避難所の「大網直子」さんに借りたものです、借りたというか借りっぱなし・・・すみません。
先日、「いいよいいよ」と借りっぱなし許可をいただきました、ありがとうございます。
かわいいので、多少無駄に写真を載せますことご容赦くださいませ。
村で生きている子たちは、ひとり過ごす長い時間の中にいます。
しかし、ラブちゃんは広範囲を動けるよに係留され、雨を避けられる棲家もあります。
それだけを見ても、飼い主が犬が憎くて置いていっているのではないことはわかるのではないでしょうか。
ラブの人好きと笑顔を見れば、愛されて育てられたことがわかるのではないでしょうか。
確かにかわいそうと感じます、しかしそこで止まってしまうと飯舘村の犬猫の問題の全体像は見えてきません。
その先にある、人の行く末が不透明で定まっていないという事情も考えていただけたらと思います。
結局のところ人の問題の解決が鍵になるのだと、僕は考えています。
■交差点の家
あー、ここ通ったことあるある。
「危険」とか「立入制限」とか「警察」とかいう言葉に、村に通い始めた頃はいちいちビビっていました。
交差点の家の給餌BOX。
ここには複数の猫が暮らしていますが、この日はだれも姿を見せず。
蕨平でとても会いたい猫がいます。蕨平で唯一なつっこいと日比さんに紹介されていたキジトラの「ラビ」ちゃんです。
※ラビはワラビのラビです。
ラビちゃんの棲家はここなのですが・・・いないよー
しばらく待っていたけど、会えなかったよー残念だよー
■栗の碑バス停
ここには「フキ」と名付けられた子が暮らしています。
給餌BOXはしっかりフキの胃袋を満たしているようでした。
なんとなくジブリの雰囲気を醸し出す素敵な場所です。
素敵というと語弊があるかもしれませんが・・・
しかし、奥へ進んでいくと、ここは時を止められてしまった場所であるという現実を突きつけられます。
さてはその目、君は人見知りだな、おい。
※日比さんのブログで人見知りなことは知っていましたけど…
「おれ、もうちょっと食いたいからあっちいけよ、人きらいなんだよ。あ、きらいまでは言い過ぎだな…メシ持ってきてくれるからな。人が苦手なんだよ」
はい、承知しました。
勢い良く伸びる新しい草たちと朽ち果てていくであろう人工物。
人は自然の中で生かされている
決して自然をコントロールなどできないのだろう
そんなことを思いました。
■柵わんこと3猫
きゃーーー、かわいい!ふっくら、短足、足太め。首はあるけど…
しじみ風の体型の猫たちが、車の音を聞きつけて姿をあらわしましたよ!
※しじみは家の外猫です。当ブログ「まるまるとしじみ」参照
「メシなでろメシなでろデシマデロナシメデロ」
大興奮
※おやつを指ごとハムるタイプなので注意です。悪気なしむしろ無邪気。
ワンコメシ支給後のねこメシ支給。
お皿が4枚あったので、3匹なのに4皿つくってしまいまいた・・・このあたりではだいぶ疲れてきていましたからね、思考だいぶ停止状態。
そして、メシになった途端に近づいてきたあいつら、何度か来たら仲良くしてくれるのかな?
■イチローの家
すごいビビリらしく、僕に気づいたとたんに行っちゃいました・・・
オレをひとりにするなよ、さびしいじゃないかよ。
「おいしいのおいたよー」とウェットフードを置いてから呼んでみたけど
シーーーーーーーーン・・・
オレをひとりにするなよ、さびしいじゃないかよ。
蕨平での活動終了@15:20 4時間が経過していました。
ここから来た道を戻り「ラビ」ちゃんの暮らす交差点の家を通りましたが、ラビちゃんじゃないキジトラさんをチラッと見かけました。
はじめての蕨平の旅。
この地にはおそらくまだ長い時間、人の営みが戻ることはありません。
しかし命は生き続けていました。
これまで何人かの住人とボランティアが彼らの命を繋いできました、彼らの存在を知り気にかけているのはごく僅かの人だけ。
本当は彼らだって幸せに暮らしていいはずなのに、ここはまるで世界から忘れ去られた場所のように感じました。
人が起こした原発事故によって、誰に知られることもなくただ消えていく命があっていいはずがありません。
僕は、これからも飯舘村の犬猫の生きた証を記録し続けていこうと思います。
何もなかったことにされないために。
[つづく]
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